一宮市で食道がんを予防や治療するための医者からのアドバイス

目次

1. 食道がんとは

食道がんは、食道の内壁を構成する細胞が異常増殖することで発生する悪性腫瘍です。

食道の解剖学的位置と機能
– 食道は喉から胃につながる約25cmの管状の臓器です。
– 主な機能は、口から摂取した食物を胃に運ぶことです。

食道がんの種類
1. 扁平上皮がん日本人の食道がんの90%以上を占めます。
2. 腺がん食道の下部や胃との境界付近に発生することが多いです。

2. 食道がんの症状

初期症状
– 飲み込みにくさ(嚥下困難)
– 胸やけや胸の違和感
– 食べ物がつかえる感じ

進行期の症状
– 嚥下痛
– 体重減少
– 声のかすれ
– 慢性の咳

見逃しやすい症状
– 胸骨後部の不快感
– 軽度の嚥下困難(水分などでは気づきにくい)

3. 食道がんの原因とリスク要因

生活習慣関連要因
– 喫煙(最大のリスク因子)
– 過度の飲酒(特に強い酒)
– 熱い飲食物の常習的摂取

遺伝的要因
– 家族性食道がん症候群
– 特定の遺伝子変異(p53遺伝子など)

既往歴や環境要因
– 慢性的な逆流性食道炎
– 頭頸部がんの既往
– 放射線治療の既往

4. 食道がんの診断方法

内視鏡検査
– 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
– 狭帯域光観察(NBI)による詳細な粘膜観察

画像診断
– CTがんの進展度や転移の有無を評価
– PET-CT全身のがん転移の検索に有用
– 超音波内視鏡(EUS)がんの深達度を詳細に評価

生検と病理検査
– 内視鏡検査時に組織を採取
– 顕微鏡による細胞の詳細な観察と診断

5. 食道がんの病期(ステージ)分類

TNM分類に基づいて以下のように分類されます

Stage 0
がん細胞が粘膜上皮内に限局

Stage I
粘膜下層までの浸潤

Stage II
固有筋層や外膜への浸潤、または限局的なリンパ節転移

Stage III
隣接臓器への浸潤や広範なリンパ節転移

Stage IV
遠隔転移あり

6. 食道がんの治療法

内視鏡治療

– 早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

手術療法
– 開胸開腹食道切除術
– 胸腔鏡下食道切除術

化学療法
– 5-FU、シスプラチンなどを用いた多剤併用療法

放射線療法
– 根治的放射線療法
– 化学放射線療法(化学療法と放射線療法の併用)

免疫療法
– 免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブなど)

7. 食道がんの予後と生存率

食道がんの予後は発見時の病期に大きく依存します

– 5年相対生存率全病期で約36%(国立がん研究センターのデータによる)

– Stage I約80-90%
– Stage II約50-60%
– Stage III約20-30%
– Stage IV約10%未満

早期発見・早期治療が予後改善の鍵となります。また、治療法の進歩により、近年生存率は徐々に改善傾向にあります。

8. 食道がんの危険性

早期発見の重要性
– 初期症状が乏しいため、早期発見が困難
– 進行すると治療が難しくなり、生存率が低下

転移のリスク
– リンパ節転移が比較的早期から起こりやすい
– 肺、肝臓、骨などへの遠隔転移のリスク

生活への影響
– 嚥下困難による栄養障害
– 手術後の食事摂取量の減少
– 声帯麻痺による発声障害のリスク

9. 食道がんの予防法と生活習慣

禁煙と節酒
– 禁煙は最も重要な予防法
– アルコール摂取は週に2日以上の休肝日を設ける

適切な食生活
– 野菜や果物の十分な摂取
– 高温の飲食物を避ける
– バランスの取れた食事

適度な運動
– 週150分以上の中等度の有酸素運動
– 肥満予防と体重管理

ストレス管理
– 十分な睡眠
– リラックス法の実践(瞑想、ヨガなど)

10. 食道がんと関連疾患

バレット食道
– 胃酸の逆流により食道下部の粘膜が変化した状態
– 食道腺がんのリスク因子

逆流性食道炎
– 胃酸の逆流による食道粘膜の炎症
– 長期間持続すると食道がんのリスクが上昇

アカラシア
– 食道と胃の接合部の筋肉が弛緩しない疾患
– 長期罹患により食道がんのリスクが上昇

11. 食道がん患者の食事と栄養管理

治療中の食事の工夫
– 少量多数回の食事
– やわらかく、のどごしの良い食事
– 水分を十分に取る

推奨される食品
– 高タンパク質食品(魚、豆腐、卵など)
– 栄養価の高い流動食

避けるべき食品
– アルコール
– 刺激物(香辛料の強い食品など)
– 極端に熱い、または冷たい食品

栄養補助食品の利用
– 医師や栄養士と相談の上、必要に応じて利用

12. 食道がん患者の運動と日常生活の注意点

運動
– 主治医と相談の上、個々の状態に合わせた運動計画を立てる
– 軽度から中等度の有酸素運動(ウォーキングなど)
– 深呼吸や胸部のストレッチ

日常生活の注意点
– 食事時は上体を起こし、ゆっくり食べる
– 就寝時は上半身を少し高くする
– 体重管理と定期的な体重測定
– 禁煙と禁酒の継続

13. 食道がんの最新研究と治療法の展望

免疫療法の進展
– 新しい免疫チェックポイント阻害薬の開発
– CAR-T細胞療法の研究

個別化医療
– がん細胞の遺伝子解析に基づいた治療法選択
– バイオマーカーを用いた治療効果予測

新しい内視鏡治療
– 光線力学療法(PDT)の改良
– 人工知能(AI)を活用した内視鏡診断支援システム

14. 食道がん患者と家族のサポート

心理的サポート
– 臨床心理士やカウンセラーによるカウンセリング
– サポートグループへの参加

患者会や支援団体の情報
– 日本食道学会患者・家族支援委員会
– がん相談支援センター(各地域のがん診療連携拠点病院に設置)

経済的支援
– 高額療養費制度の利用
– 傷病手当金や障害年金の申請

15. 食道がんのスクリーニングと定期検診の重要性

スクリーニング方法
– 上部消化管内視鏡検査
– 食道造影検査

定期検診の推奨
– 50歳以上の方は2年に1回の内視鏡検査を推奨
– ハイリスク群(喫煙者、大量飲酒者など)はより頻繁な検査を検討

16. 食道がんに関するQ&A

Q1: 食道がんの初期症状は何ですか?

A1: 軽度の嚥下困難や胸やけなどですが、初期は無症状のことも多いです。

Q2: 食道がんは遺伝しますか?

A2: 一部の家族性症候群を除き、直接的な遺伝性は低いですが、生活習慣の影響が大きいです。

Q3: 食道がんの治療後、普通の食事は摂れますか?

A3: 治療法や進行度によって異なりますが、多くの場合、徐々に通常の食事に戻れます。

17. まとめ早期発見と予防の重要性

食道がんは早期発見が難しいがんですが、以下の点に注意することで、予防と早期発見の可能性が高まります

1. 禁煙と適度な飲酒
2. バランスの取れた食生活と適度な運動
3. 定期的な健康診断と内視鏡検査の受診
4. 症状(特に嚥下困難)がある場合の迅速な医療機関受診
5. ストレス管理と十分な睡眠

早期発見されれば治療の選択肢が広がり、生存率も向上します。

生活習慣の改善と定期的な検診で、食道がんのリスク低減と早期発見に努めるためにも、少しでも違和感がありましたら、当院に受診してください。

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この記事を書いた人

1982年に名古屋保健衛生大学 医学部(現 藤田医科大学)卒業後、厚生連愛北病院の内科に勤務。1988年に、名古屋大学付属病院 内科で勤務し、1991年には厚生連愛北病院の消化器科医長を務める。翌年の1992年 名古屋大学 医学部医学博士号学位取得し、1993年に厚生連愛北病院内視鏡部長に。1994年に磯村医院開院し、現在は医療法人育德会 理事長 社会福祉法人延德会の理事長を務めている。2022には藍綬褒章を受章。

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