一宮市で胃がんを予防や治療するための医者からのアドバイス

目次

1. 胃がんとは?基本的な理解

胃がんは、胃の内壁にある細胞が異常に増殖することで発生する悪性腫瘍です。

初期の段階では症状がほとんどないため、「サイレントキラー」とも呼ばれています。

日本人と胃がんの関係

胃がんは日本人にとって特に注意が必要な疾患です。

かつては日本人の癌による死亡原因の第1位でした。近年は減少傾向にありますが、依然として罹患率が高く、早期発見と適切な治療が重要です。

2. 胃がんの主な症状

初期症状
– 胃部の不快感や軽い痛み
– 胸やけや消化不良
– 食欲不振

進行期の症状
– 持続的な腹痛
– 嘔吐や吐き気
– 体重減少
– 貧血(めまいや疲労感)

見逃しやすい症状
– 食後のもたれ感
– わずかな出血(黒色便)

これらの症状は他の消化器疾患でも現れることがあるため、症状が持続する場合は当院での検査をお勧めします。

3. 胃がんの原因と危険因子

胃がんの発生には様々な要因が関与していますが、主な原因と危険因子は以下の通りです:

ヘリコバクター・ピロリ菌感染
– 胃がん発生リスクを2~3倍に高めるとされています。
– 日本人の約50%が感染していると言われています。

遺伝的要因
– 胃がんの家族歴がある場合、リスクが高まります。
– 特定の遺伝子変異が胃がんのリスクを高めることがわかっています。

生活習慣に関連する要因
– 塩分の過剰摂取
– 喫煙
– 過度の飲酒
– 野菜や果物の摂取不足
– 肥満

4. 胃がんの診断方法

磯村

胃がんの診断には以下の方法が用いられます。

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)
– 最も確実な診断方法です。
– 直接胃の内部を観察し、必要に応じて組織検査(生検)を行います。
-拡大内視鏡を併用し、質的診断を行います。

X線検査(胃バリウム検査)
– バリウムを飲んでX線撮影を行い、胃の形や伸びの異常を調べます。
– 集団検診などでよく用いられます。

血液検査
– 腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)を調べます。
– 貧血の有無なども確認します。

CT・MRI検査
– がんの進行度や転移の有無を調べるために行います。

これらの検査を組み合わせることで、胃がんの有無や進行度を正確に診断します。

5. 胃がんの病期(ステージ)と進行度

胃がんの病期(ステージ)は、がんの進行度を示す重要な指標です。治療方針の決定や予後の予測に用いられます。

胃がんのステージは主に以下の要素で決定されます

– T:原発腫瘍の深達度(胃の壁のどの層まで広がっているか)
– N:リンパ節転移の程度
– M:遠隔転移の有無

ステージ0:粘膜内にとどまる早期がん
ステージI:粘膜下層までの比較的早期のがん
ステージII:固有筋層や漿膜下層に達したがん
ステージIII:漿膜に達し、近くのリンパ節に転移があるがん
ステージIV:遠隔転移のあるがん

早期発見・早期治療が重要であり、ステージが進むほど治療が難しくなります。

定期的な検診で早期発見に努めることが大切です。

6. 胃がんの治療法

胃がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や患者さんの全身状態などを考慮して、以下の方法を単独または組み合わせて行います。

内視鏡的治療
– 早期胃がんに対して行われます。
– 内視鏡を使って、がん組織を直接切除します。
– 胃の機能を温存できる低侵襲な治療法です。

外科的治療(手術)
– 胃の一部または全部を切除します。
– リンパ節郭清も同時に行います。
– 近年は腹腔鏡手術など、より低侵襲な手術も増えています。

化学療法
– 抗がん剤を使用して、がん細胞の増殖を抑えます
– 進行・再発胃がんの治療や、手術前後の補助療法として用いられます。

放射線療法
– 高エネルギーX線などを用いて、がん細胞を攻撃します。
– 胃がんでは比較的まれですが、他の治療法と併用されることがあります。

免疫療法
– 体の免疫システムを活性化させ、がん細胞を攻撃する治療法です。
– 近年、新しい免疫チェックポイント阻害薬が登場し、注目されています。

7. 胃がんの予後と生存率

胃がんの予後は、発見時の病期(ステージ)によって大きく異なります。

– ステージI:5年生存率は90%以上
– ステージII:5年生存率は70-80%
– ステージIII:5年生存率は50-60%
– ステージIV:5年生存率は10-20%

ただし、これらは統計的な数字であり、個々の患者さんの予後は様々な要因によって変わります。

早期発見・早期治療が予後改善の鍵となります。

8. 胃がんの予防法と生活習慣

磯村

胃がんのリスクを下げるための予防法と生活習慣について説明します。

ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌
– ピロリ菌感染が確認された場合、除菌治療を検討しましょう。
– 除菌により胃がんのリスクが低下することが分かっています。

禁煙
– 喫煙は胃がんのリスクを高めます。禁煙は胃がん予防に効果的です。

適度な飲酒
– 過度の飲酒は避け、適量を心がけましょう。

バランスの取れた食生活
– 塩分の摂取を控えめにし、野菜や果物を積極的に摂取しましょう。
– 熱い食べ物や飲み物は冷ましてから摂取しましょう。

定期的な運動
– 適度な運動は免疫機能を高め、がん予防に効果があります。
– 週150分以上の中等度の有酸素運動を目標にしましょう。

9. 胃がん患者の食事と栄養管理

治療中の食事の工夫
– 少量ずつ、頻回に食事を取りましょう。
– 消化の良い食品を中心に選びましょう。
– たんぱく質やビタミン、ミネラルの摂取に気を付けましょう。

術後の食事の注意点
– 胃の容量が減少するため、少量ずつ、よく噛んで食べましょう。
– ダンピング症候群(食後の不快感、めまい、動悸など)に注意しましょう。
– 必要に応じて、栄養補助食品を利用しましょう。

個々の状況に応じた栄養指導が重要です。

医師や栄養士に相談しながら、適切な食事プランを立てましょう。

10. 胃がんと関連疾患

胃がんと関連する主な疾患について説明します。

慢性胃炎
– ピロリ菌感染などによる長期の胃の炎症です。
– 胃がんの前駆状態となることがあります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍
– 胃や十二指腸の粘膜に傷ができる疾患です。
– 潰瘍自体はがんではありませんが、長期間の慢性炎症はがんのリスクを高める可能性があります。

胃ポリープ
– 胃の粘膜から隆起した良性の腫瘍です。
– 一部のタイプは、がんに進行する可能性があります。

これらの関連疾患がある場合、定期的な検査と適切な治療が重要です。

11. 胃がん検診の重要性

胃がん検診は、症状が現れる前に胃がんを発見するための重要な手段です。

検診の種類と頻度
– 胃X線検査(バリウム検査):年1回
– 胃内視鏡検査:2年に1回

検診を受けるべき年齢
50歳以上の方定期的な検診をお勧めします。
– 胃がんの家族歴がある方は、40歳代からの検診も考慮しましょう。

早期発見により、治療の選択肢が広がり、治癒率も高くなります。定期的な検診で、胃がんから身を守りましょう。

12. 胃がん治療後の生活とフォローアップ

治療後の生活には、以下の点に注意が必要です:

定期検査の重要性
– 治療後も定期的な検査が必要です。
– 再発や転移の早期発見のため、医師の指示に従って検査を受けましょう。

再発のリスクと対策
– 禁煙、適度な飲酒、バランスの取れた食事など、健康的な生活習慣を心がけましょう。
– 体調の変化があれば、すぐに担当医に相談しましょう。

治療後の生活の質(QOL)を維持するため、必要に応じてリハビリテーションや栄養指導を受けることも大切です。

13. 胃がんに関する最新の研究と治療法

胃がん治療は日々進歩しています。最新の動向をいくつか紹介します:

新しい薬物療法
– 分子標的薬:がん細胞に特異的に作用する薬剤
– 免疫チェックポイント阻害薬:体の免疫システムを活性化させる薬剤

個別化医療の進展
– がんの遺伝子検査に基づいて、個々の患者さんに最適な治療を選択する試みが進んでいます。

これらの新しい治療法により、進行胃がんの治療成績も徐々に向上しています。

14. 胃がん患者とその家族へのサポート

胃がんと向き合うには、心理的なサポートも重要です

心理的サポート
– 不安や悩みがあれば、遠慮なく医療スタッフに相談しましょう。
– 必要に応じて、心理カウンセラーのサポートを受けることも検討しましょう。

患者会や支援グループの活用
– 同じ経験をした人々との交流は、大きな支えになります。
– 情報交換や経験の共有ができる患者会や支援グループへの参加を検討しましょう。

家族や周囲の人々の理解と協力も、患者さんの支えとなります。

15. よくある質問(FAQ)

Q: 胃がんは遺伝する?

A: 一部の胃がんには遺伝的要因が関与しますが、多くの場合は生活習慣や環境要因が大きく影響します。

Q: 胃を全摘出したらどうなる?

A: 食事の量や回数の調整が必要になりますが、適切な管理により通常の生活を送ることができます。栄養面での注意も必要です。

Q: 若年性胃がんについて

A: 40歳未満で発症する胃がんを若年性胃がんと呼びます。近年増加傾向にあり、注意が必要です。

16. まとめ:胃がんと向き合う心構えと希望

胃がんと診断されても、決して悲観する必要はありません。

– 早期発見・早期治療により、多くの場合で完治が可能です。
– 治療法の進歩により、進行がんでも長期生存が可能になってきています。
– 適切な治療と生活管理により、質の高い生活を送ることができます。

そして、大切なのは、

1. 定期的な検診で早期発見に努める
2. 症状があれば迷わず医療機関を受診する
3. 医療チームと協力して最適な治療を選択する
4. 健康的な生活習慣を心がける
5. 家族や周囲のサポートを大切にする

胃がんと向き合うことは決して容易ではありませんが、希望を持って前向きに取り組むことが大切です。

わからないことや不安なことがあれば、遠慮なく当院のスタッフに相談してください。皆様の健康と幸せを心よりお祈りしています。

ご予約はこちら

診療時間はこちら
画像をタップすると
大きく表示されます

この記事を書いた人

1982年に名古屋保健衛生大学 医学部(現 藤田医科大学)卒業後、厚生連愛北病院の内科に勤務。1988年に、名古屋大学付属病院 内科で勤務し、1991年には厚生連愛北病院の消化器科医長を務める。翌年の1992年 名古屋大学 医学部医学博士号学位取得し、1993年に厚生連愛北病院内視鏡部長に。1994年に磯村医院開院し、現在は医療法人育德会 理事長 社会福祉法人延德会の理事長を務めている。2022には藍綬褒章を受章。

目次