一宮市で肛門がんの症状・原因・予防や治療するための医者からのアドバイス

目次

 1. 肛門がんとは

肛門がんは、肛門管や肛門縁に発生する比較的稀な悪性腫瘍です。

肛門管は、直腸の末端から肛門開口部までの短い管状の部分を指し、長さは約2-4cmです。肛門縁は肛門開口部の周囲の皮膚部分を指します。

肛門がんの特徴
– 扁平上皮がんが最も一般的(約80%)
– その他、腺がんや基底細胞がんなども発生する可能性がある
– 早期発見・早期治療が重要

日本における発症率と統計
– 大腸がん全体の約1-2%を占める
– 年間発症数は約1,000-1,500人程度
– 50歳以上の方に多く見られるが、若年層での発症も増加傾向

 2. 肛門がんの症状

永井

肛門がんの症状は、初期段階では他の良性の肛門疾患(痔など)と似ていることがあるため、注意が必要です。

初期症状
– 肛門周囲の痛みやかゆみ
– 排便時の出血や痛み
– 肛門周囲のしこりや腫れ

進行期の症状
– 持続的な肛門痛
– 排便習慣の変化(便秘や下痢)
– 体重減少や倦怠感

見逃しやすい症状と注意点
– 初期症状が痔と似ているため、自己判断せずに医療機関を受診することが重要
– 症状が2週間以上続く場合は、専門医の診察を受けることを推奨

 3. 肛門がんの原因とリスク因子

永井

肛門がんの発生には複数の要因が関与していますが、最も重要なリスク因子はHPV(ヒトパピローマウイルス)感染です。

HPV感染との関連
– HPV16型と18型が特に高リスク
– 感染から発がんまでに数年から数十年かかることがある

その他のリスク因子
– 喫煙:発がんリスクを約2-5倍増加させる
– 免疫不全:HIV感染者や臓器移植後の免疫抑制剤使用者でリスクが上昇
– 慢性的な肛門の炎症:長期の痔瘻や裂肛がリスクを高める可能性
– 多数のパートナーとの性行為:特に肛門性交渉

遺伝的要因
– 直接的な遺伝性は低いが、家族歴がある場合はリスクが若干高まる可能性あり

 4. 肛門がんの診断方法

永井

肛門がんの診断は、複数の検査を組み合わせて行われます。

問診と視診
– 症状の詳細や持続期間、生活習慣などを聴取
– 肛門周囲の外観を注意深く観察

直腸指診
– 医師が指を肛門に挿入し、しこりや硬結の有無を確認
– 痛みの程度や位置も評価

画像診断
– CT検査:がんの進行度や周囲への浸潤、転移の有無を確認
– MRI検査:軟部組織の詳細な評価が可能
– 超音波検査:肛門周囲の状態を非侵襲的に評価

生検
– 疑わしい部位から組織を採取し、顕微鏡で細胞を詳しく観察
– 確定診断に不可欠な検査

 5. 肛門がんの病期(ステージ)

永井

肛門がんの病期分類には、主にTNM分類が用いられます。これにより、治療方針の決定や予後の予測が行われます。

TNM分類の説明
– T:原発腫瘍の大きさと浸潤度
– N:リンパ節転移の有無と程度
– M:遠隔転移の有無

各ステージの特徴と予後
– ステージ0:がんが粘膜内にとどまっている(上皮内がん)
– ステージI:がんが粘膜下層まで浸潤しているが、2cm以下
– ステージII:がんが2cm以上、または周囲の組織に浸潤
– ステージIIIA:がんが近傍のリンパ節に転移
– ステージIIIB:がんが複数のリンパ節や両側のリンパ節に転移
– ステージIV:他の臓器に遠隔転移がある

一般的に、早期のステージほど予後が良好です。

5年生存率は、ステージIでは80-90%程度ですが、ステージIVでは20-30%程度に低下します。

 6. 肛門がんの治療法

永井

肛門がんの治療は、がんの進行度や患者さんの全身状態を考慮して、以下の方法を単独または組み合わせて行います。

手術療法
– 早期の小さながんの場合、局所切除が可能
– 進行がんの場合、肛門温存が困難な場合もあり、人工肛門造設を伴う手術が必要になることも

放射線療法
– 主要な治療法の一つで、化学療法と併用されることが多い
– 肛門機能を温存できる可能性が高い

化学療法
– 放射線療法との併用(化学放射線療法)が標準治療
– 5-FUとミトマイシンCの併用が一般的

免疫療法
– 進行・再発例に対して、免疫チェックポイント阻害剤が使用される場合がある

治療法の選択基準
– がんの進行度(ステージ)
– 患者さんの年齢と全身状態
– 肛門機能温存の可能性
– 患者さんの希望

 7. 肛門がんの予防法と生活習慣

永井

肛門がんのリスクを減らすために、以下の予防法と生活習慣の改善が推奨されます。

HPVワクチン接種
– HPV関連がんの予防に有効
– 若年層での接種が推奨されるが、成人でも検討可能

禁煙
– 喫煙は肛門がんのリスクを高めるため、禁煙が強く推奨される
– 禁煙外来や禁煙補助薬の利用も検討

適切な肛門ケア
– 清潔を保つ
– 過度の摩擦や刺激を避ける
– 長時間の座位を避け、適度に体を動かす

定期的な健康診断
– 年1回の健康診断を受ける
– 症状がある場合は早めに専門医を受診

その他の生活習慣
– バランスの取れた食事(特に食物繊維の摂取)
– 適度な運動(週150分の中等度の有酸素運動を目安に)
– 過度の飲酒を控える
– ストレス管理

これらの予防法と生活習慣を心がけることで、肛門がんのリスクを低減し、早期発見・早期治療につながる可能性が高まります。

しかし、完全な予防は困難なため、定期的な検診と早期受診の重要性を忘れないようにしましょう。

 8. 肛門がんと関連疾患

永井

肛門がんは他の疾患と症状が似ていたり、関連性があったりすることがあります。正確な診断と適切な治療のために、これらの違いや関連性を理解することが重要です。

痔との違い
– 症状の類似点:出血、痛み、腫れなど

違い
– 痔は良性疾患で、多くの場合自然に治癒または保存的治療で改善
– 肛門がんは悪性腫瘍で、適切な治療を行わないと進行する

注意点
長期間続く痔の症状は、肛門がんの可能性も考慮して医師の診察を受けることが重要

炎症性腸疾患との関連
– クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患患者は、肛門がんのリスクが若干高まる
– 長期の炎症が発がんに関与している可能性がある
– 定期的な検査と経過観察が重要

HIV/AIDSとの関連
– HIV感染者は肛門がんのリスクが高い(一般人口の約15-35倍)

原因
– 免疫機能の低下
– HPV感染のリスク増加
– HIV感染者は定期的な肛門がん検診が推奨される

 9. 食事と運動のポイント

永井

適切な食事と運動は、肛門がんの予防だけでなく、全体的な健康維持にも重要です。

がん予防に効果的な食事
– 野菜や果物を豊富に摂取(1日5皿以上を目標)
– 全粒穀物の摂取(玄米、全粒粉パンなど)
– 赤身肉や加工肉の摂取を控える
– オメガ3脂肪酸を含む食品(魚、亜麻仁油など)を適度に摂取
– アルコールは控えめに

繊維質の摂取の重要性
– 便通を整え、腸内環境を改善
– 水溶性繊維(オートミール、りんごなど)と不溶性繊維(全粒穀物、野菜など)をバランス良く摂取
– 1日の目標摂取量:成人男性約20-25g、成人女性約18-20g

適度な運動の効果
– 免疫機能の向上
– 腸の蠕動運動の促進
– ストレス軽減とメンタルヘルスの改善

推奨される運動量
– 有酸素運動:週150分の中等度の運動(ウォーキング、水泳など)
– 筋力トレーニング:週2回以上

 10. 肛門がん患者のQOL(生活の質)

永井

肛門がんの治療は、患者さんの生活に大きな影響を与える可能性があります。QOLを維持・向上させるためのサポートは治療の重要な一部です。

ストーマケア
– 人工肛門(ストーマ)造設が必要な場合の適切なケア方法
– ストーマ用品の選択と使用方法
– 皮膚トラブルの予防と対処
– ストーマ外来や専門看護師によるサポート

心理的サポート
– がん診断に伴う不安やストレスへの対処
– 治療中・治療後のメンタルヘルスケア
– 心理カウンセリングや支援グループの活用
– 家族や周囲の人々との良好なコミュニケーションの維持

社会復帰支援
– 職場復帰のサポート
– 経済的支援制度の利用(高額療養費制度、傷病手当金など)
– リハビリテーションプログラムの活用
– 患者会や患者支援団体とのつながり

 11. 最新の研究と治療法

永井

肛門がんの治療は日々進歩しており、新しい治療法や診断技術が開発されています。

臨床試験の情報
– 新薬や新しい治療法の開発状況
– 参加可能な臨床試験の情報
– 臨床試験参加のメリットとリスク

新しい診断技術
– 高解像度内視鏡検査
– PET-CT検査による早期診断と転移検索
– 液体生検(血液検査によるがん診断)の研究

将来の治療法の展望
– 免疫療法の更なる発展
– 個別化医療(遺伝子プロファイリングに基づく治療)
– 放射線療法の技術革新(強度変調放射線治療など)

 12. よくある質問(FAQ)

永井

患者さんや一般の方々からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1: 検診の頻度はどのくらいがよいですか?

A1: 一般的には年1回の肛門がん検診が推奨されます。ただし、高リスク群(HIV感染者、HPV感染者など)の方はより頻繁な検診が必要な場合があります。

Q2: 手術後の生活はどのように変わりますか?

A2: 手術の種類や範囲によって異なりますが、一時的または永久的なストーマ造設が必要な場合があります。また、排便機能の変化や性機能への影響が生じる可能性があります。リハビリテーションや専門家のサポートを受けながら、新しい生活に適応していくことが重要です。

Q3: 再発リスクとその対策は?

A3: 再発リスクは初期の病期や治療内容によって異なります。定期的な経過観察、健康的な生活習慣の維持、そして異常を感じた際の早期受診が重要な対策となります。

13. 専門医への相談のタイミングと方法

永井

適切なタイミングで専門医に相談することは、早期発見・早期治療につながる重要なステップです。

受診の目安
– 2週間以上続く肛門の痛みやかゆみ
– 排便時の出血が続く
– 肛門周囲のしこりや腫れを感じる
– 便の形状や排便習慣の変化が続く
– 原因不明の体重減少や倦怠感がある

準備しておくべき情報
– 症状の詳細(いつから、どのような症状か)
– 既往歴や家族歴
– 現在服用中の薬剤
– 生活習慣(喫煙、飲酒、食事など)

セカンドオピニオンの重要性
– 診断や治療方針に疑問や不安がある場合は躊躇せずに検討
– セカンドオピニオン外来を行っている医療機関の情報収集
– 現在の主治医に遠慮せず、率直に相談することが大切

肛門がんは早期発見・早期治療が非常に重要です。

気になる症状がある場合は、恥ずかしがらずに専門医に相談しましょう。

適切な治療を受けることで、多くの場合、良好な予後が期待できます。

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この記事を書いた人

1982年に名古屋保健衛生大学 医学部(現 藤田医科大学)卒業後、厚生連愛北病院の内科に勤務。1988年に、名古屋大学付属病院 内科で勤務し、1991年には厚生連愛北病院の消化器科医長を務める。翌年の1992年 名古屋大学 医学部医学博士号学位取得し、1993年に厚生連愛北病院内視鏡部長に。1994年に磯村医院開院し、現在は医療法人育德会 理事長 社会福祉法人延德会の理事長を務めている。2022には藍綬褒章を受章。

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