一宮市で黄疸を予防や治療するための医者からのアドバイス

目次

1. 黄疸とは

黄疸(おうだん)は、体内のビリルビンという物質が増加し、皮膚や白目が黄色く染まる状態を指します。

ビリルビンについて

ビリルビンは、主に古くなった赤血球が分解されるときに生成される黄色い色素です。通常、肝臓で代謝され、胆汁として腸に排出されます。

黄疸の定義と基準値

血中のビリルビン値が正常値(0.2~1.0 mg/dL)を超えて上昇すると黄疸が現れます。

一般的に、血中ビリルビン値が2.5~3.0 mg/dL以上になると、肉眼で黄疸を確認できるようになります。

2. 黄疸の症状

黄疸の主な症状は、皮膚や粘膜が黄色く染まることですが、他の症状も伴うことがあります。

皮膚や白目の黄染
– まず白目(強膜)が黄色くなり、その後皮膚が黄色くなります。
– 皮膚の黄染は、顔面から始まり、徐々に体全体に広がります。

その他の随伴症状
– 疲労感や倦怠感
– 食欲不振
– 吐き気や嘔吐
– 腹痛
– 発熱
– 尿の色が濃くなる(ビールのような色)
– 便の色が薄くなる(灰白色)

新生児黄疸の特徴
– 生後2~3日目から現れ、1週間程度で自然に消失することが多い
– 重症化すると無気力、哺乳力低下、高音域の泣き声などが見られる

3. 黄疸の原因

黄疸は、ビリルビンの代謝過程のどこで問題が起きているかによって、以下の3つに分類されます。

肝前性黄疸
– 溶血性貧血などで赤血球の破壊が亢進し、ビリルビンの産生が増加する
– 主な原因遺伝性球状赤血球症、自己免疫性溶血性貧血など

肝性黄疸
– 肝臓でのビリルビンの処理能力が低下する
– 主な原因ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、薬剤性肝障害、肝硬変など

肝後性黄疸
– 胆道の閉塞によりビリルビンの排泄が妨げられる
– 主な原因胆石、膵臓がん、胆管がんなど

新生児黄疸の原因
– 生理的要因(肝臓の未熟性)
– 母乳性黄疸
– 血液型不適合など

4. 黄疸の診断方法

黄疸の正確な診断と原因特定のために、以下の検査が行われます。

血液検査
– 総ビリルビン値、直接ビリルビン値、間接ビリルビン値の測定
– 肝機能検査(AST、ALT、ALP、γ-GTPなど)
– 血球検査(貧血の有無)
– ウイルス性肝炎の検査

画像診断
– 腹部超音波検査肝臓、胆嚢、胆管の状態を確認
– CT検査腫瘍や結石の有無を詳細に調べる
– MRI検査胆道系の詳細な画像を得る
– ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)胆道の閉塞原因を特定する

肝生検
– 肝臓の一部を採取して顕微鏡で観察
– 肝炎や肝硬変の程度を詳細に評価する

5. 黄疸の対策や治療法

黄疸の治療は原因疾患に応じて行われます。

原因疾患に応じた治療
– ウイルス性肝炎抗ウイルス薬の投与
– 胆石胆石除去術(内視鏡的または外科的)
– 腫瘍手術、化学療法、放射線療法など

薬物療法
– 利胆薬ビリルビンの排泄を促進
– 肝庇護薬肝機能の保護と回復を促進

手術療法
– 胆道閉塞の解除
– 肝臓や胆道系の腫瘍切除

新生児黄疸の治療
– 光線療法特殊な光を照射してビリルビンを分解
– 重症例では交換輸血

6. 黄疸の危険性

適切な治療を受けないと、黄疸は深刻な合併症を引き起こす可能性があります。

重症化のリスク
– 肝不全肝臓の機能が著しく低下し、生命を脅かす状態
– 胆汁うっ滞長期間の胆汁うっ滞は肝臓や他の臓器に悪影響を及ぼす

合併症
– 掻痒感ビリルビンが皮膚を刺激して激しいかゆみが生じる
– 凝固障害ビタミンKの吸収障害により出血傾向が現れる
– 脂溶性ビタミン欠乏ビタミンA、D、E、Kの吸収障害

核黄疸(新生児)
– 高ビリルビン血症により脳にビリルビンが沈着
– 重度の神経障害を引き起こす可能性がある

7. 普段からできる黄疸の予防法や生活習慣

黄疸そのものを直接予防することは難しいですが、肝臓の健康を維持することで関連疾患のリスクを減らすことができます。

適度な運動
– 週3-4回、30分程度の有酸素運動(ウォーキング、水泳など)
– 適度な筋力トレーニング

バランスの取れた食事
– 野菜や果物を多く摂取
– 過度の脂肪や糖分を控える
– 十分なタンパク質摂取

アルコール摂取の制限
– 週2日は休肝日を設ける
– 1日の適量を守る(日本酒なら1合程度)

定期的な健康診断
– 年1回は肝機能検査を含む健康診断を受ける
– 家族歴がある場合はより頻繁なチェックを検討

その他
– 十分な睡眠をとる
– ストレス管理を心がける
– 喫煙を避ける

8. 黄疸と関連疾患

黄疸は様々な疾患の症状として現れます。主な関連疾患は以下の通りです。

肝炎
– ウイルス性肝炎(A型、B型、C型など)
– アルコール性肝炎
– 自己免疫性肝炎

肝硬変
– 慢性的な肝障害により肝臓が硬くなる
– 肝機能が低下し、黄疸が現れやすくなる

胆石症
– 胆石が胆道を閉塞し、黄疸を引き起こす
– 急性胆嚢炎や胆管炎を伴うことがある

膵臓疾患
– 膵臓がん胆管を圧迫し、閉塞性黄疸の原因となる
– 慢性膵炎膵管の狭窄により黄疸が生じることがある

9. 食事や運動のポイント

黄疸がある場合、または肝臓の健康を維持するための食事や運動のポイントは以下の通りです。

肝臓に優しい食事
– 低脂肪、低塩分の食事
– 抗酸化物質を多く含む食品(ベリー類、緑茶など)
– 食物繊維が豊富な食品(全粒穀物、野菜など)

避けるべき食品
– アルコール
– 高脂肪食品
– 加工食品や保存食品

適切な運動量と種類
– 軽度から中等度の有酸素運動(ウォーキング、水泳など)
– 過度な運動は避ける
– 医師の指示に従い、体調に合わせて調整する

10. 黄疸と妊娠

妊娠中の黄疸は注意が必要です。

妊娠性肝内胆汁うっ滞
– 妊娠後期に発症することが多い
– 激しい掻痒感を伴う
– 胎児への影響があるため、慎重な管理が必要

妊娠中の黄疸の危険性
– 早産のリスク増加
– 胎児の発育遅延
– 新生児の呼吸障害

管理のポイント
– 定期的な肝機能検査
– 胎児の状態モニタリング
– 専門医による適切な治療

11. 黄疸と薬剤

薬剤による肝障害は黄疸の原因となることがあります。

薬剤性肝障害
– 医薬品やサプリメントによる肝機能障害
– 投薬開始後数日から数か月で発症することがある

注意すべき薬剤
– 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)
– 抗生物質の一部
– 漢方薬
– 健康食品やサプリメント

対策
– 医師や薬剤師の指示を守る
– 複数の薬を服用する場合は相互作用に注意
– 症状が現れたら速やかに医療機関に相談

12. 黄疸の経過と予後

黄疸の経過と予後は原因疾患によって大きく異なります。

回復までの期間
– 急性肝炎数週間から数か月
– 胆石による閉塞治療後速やかに改善
– 慢性疾患長期的な管理が必要

長期的な影響
– 適切な治療で多くの場合は完全回復可能
– 慢性肝疾患の場合、継続的な管理が必要
– 重症例では肝不全に進行する可能性がある

13. 黄疸と生活の質(QOL)

黄疸は患者さんの日常生活に様々な影響を与えます。

日常生活への影響
– 疲労感や倦怠感による活動制限
– 掻痒感によるストレスや睡眠障害
– 食事制限による生活の質の低下

心理的ケア
– 不安やうつ症状への対応
– 家族や友人のサポート
– 必要に応じて心理カウンセリングの利用

社会生活への影響
– 就労や学業への影響
– 社会活動の制限

対策
– 医療チームとの密な連携
– 患者会やサポートグループの活用
– リハビリテーションプログラムへの参加

14. よくある質問(FAQ)

Q: 黄疸は伝染しますか?

A: 黄疸自体は伝染しません。ただし、黄疸の原因となるウイルス性肝炎(特にA型やB型)は感染する可能性があります。適切な衛生管理と予防接種が重要です。

Q: 黄疸は完治しますか?

A: 原因によって異なります。急性の場合(例急性肝炎や胆石)は適切な治療で完治することが多いです。慢性疾患が原因の場合は、症状のコントロールと長期的な管理が必要になることがあります。

Q: 仕事や学校はいつから再開できますか?

A: 原因疾患や症状の程度によって異なります。一般的に、発熱などの急性症状が落ち着き、全身状態が改善してから再開できます。ただし、必ず主治医の指示に従ってください。

Q: 黄疸があると肝臓がんになりやすいですか?

A: 黄疸自体が直接肝臓がんを引き起こすわけではありませんが、慢性的な肝疾患(慢性肝炎や肝硬変など)が原因の黄疸の場合、肝臓がんのリスクが高くなることがあります。定期的な検査と経過観察が重要です。

Q: 新生児の黄疸は必ず治療が必要ですか?

A: 新生児の黄疸は多くの場合、生理的なもので自然に改善します。ただし、ビリルビン値が高い場合や長期化する場合は、光線療法などの治療が必要になることがあります。

15. 受診の目安

以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう

– 皮膚や白目が黄色くなった
– 尿の色が濃くなり、便の色が薄くなった
– 原因不明の全身倦怠感や食欲不振が続く
– 右上腹部に痛みがある
– 発熱や悪寒がある
– 激しい掻痒感がある

どの診療科を受診すべきか
– 一般内科や消化器内科初期診断や軽症例
– 肝臓専門医慢性肝疾患や複雑な症例
– 消化器外科胆石や腫瘍による閉塞性黄疸
– 小児科新生児や小児の黄疸

受診時のポイント
– 症状の経過や程度を詳しく伝える
– 服用中の薬やサプリメントがあれば、全て伝える
– 最近の食生活や飲酒習慣についても正直に話す
– 家族歴(特に肝疾患)があれば伝える

16. 最新の黄疸研究と治療法

黄疸の診断や治療に関する研究は日々進歩しています。

新しい診断技術
– 非侵襲的な肝線維化評価法フィブロスキャンやMRエラストグラフィーなど
– 遺伝子検査遺伝性の黄疸の原因特定に有用
– AI(人工知能)を用いた画像診断早期発見や鑑別診断の精度向上

革新的な治療法
– 新世代の抗ウイルス薬C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)
– 免疫療法自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎に対する新しいアプローチ
– 再生医療肝細胞の再生を促進する治療法の研究
– 精密医療個々の患者の遺伝子情報に基づいたテーラーメイド治療

予防医学の進歩
– 新しいワクチンの開発B型肝炎やC型肝炎の予防
– 生活習慣改善プログラムICTを活用した肝臓病予防プログラム

黄疸の管理や治療は、医学の進歩とともに日々進化しています。

最新の情報については、必ず医療専門家にご相談ください。また、新しい治療法や臨床試験についても、主治医と相談しながら検討することが大切です。

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この記事を書いた人

1982年に名古屋保健衛生大学 医学部(現 藤田医科大学)卒業後、厚生連愛北病院の内科に勤務。1988年に、名古屋大学付属病院 内科で勤務し、1991年には厚生連愛北病院の消化器科医長を務める。翌年の1992年 名古屋大学 医学部医学博士号学位取得し、1993年に厚生連愛北病院内視鏡部長に。1994年に磯村医院開院し、現在は医療法人育德会 理事長 社会福祉法人延德会の理事長を務めている。2022には藍綬褒章を受章。

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