一宮市ですい臓がんを予防や治療するための医者からのアドバイス

目次

1. 膵臓がんとは

膵臓がんは、膵臓の細胞が異常増殖することで発生する悪性腫瘍です。

膵臓の解剖学的位置と機能
– 膵臓は胃の後ろ、横隔膜のすぐ下に位置する約15cm程度の細長い臓器です。
– 主な機能は以下の2つです

1. 消化酵素の分泌脂肪、タンパク質、炭水化物の消化を助けます。
2. ホルモン(インスリンやグルカゴン)の分泌血糖値の調整を行います。

膵臓がんの種類

1. 膵管腺がん最も一般的で、全体の約90%を占めます。
2. 膵内分泌腫瘍ホルモンを分泌する細胞から発生するがんで、比較的まれです。
3. 嚢胞性腫瘍嚢胞(液体の詰まった袋)を形成するがんです。

2. 膵臓がんの症状

初期症状
– 初期の膵臓がんは無症状であることが多く、「サイレントキラー」とも呼ばれます。

磯村

わずかな症状として以下が挙げられます

– 上腹部の違和感や痛み
– 食欲不振
– 原因不明の体重減少

進行期の症状
– 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
– 腹痛の悪化(背中に放散する痛みを伴うことも)
– 急激な体重減少
– 疲労感や倦怠感
– 吐き気や嘔吐

見逃しやすい症状
– 新たに発症した糖尿病(特に50歳以上の場合)
– 原因不明の膵炎

– うつ状態や気分の落ち込み

3. 膵臓がんの原因とリスク要因

膵臓がんの明確な原因は特定されていませんが、以下のリスク要因が知られています

遺伝的要因
– 家族性膵臓がん症候群
– BRCA1/BRCA2遺伝子変異
– リンチ症候群

生活習慣関連要因
– 喫煙(最大のリスク因子で、リスクを2~3倍に増加)
– 過度の飲酒
– 肥満
– 運動不足
– 不適切な食生活(高脂肪食、加工肉の多量摂取など)

環境要因
– 慢性膵炎
– 長期の糖尿病(特に2型糖尿病)
– 職業的な化学物質への暴露

4. 膵臓がんの診断方法

磯村

膵臓がんの診断には、以下の方法が用いられます

血液検査
– 腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)の測定
– 肝機能検査
– 膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の測定

画像診断
– CT(コンピュータ断層撮影)最も一般的で有効な検査方法
– MRI(磁気共鳴画像法)特に膵管の詳細な観察に有用
– 超音波検査非侵襲的で簡便な検査法
– ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)膵管や胆管の詳細な観察が可能
– PET-CTがんの転移や再発の検出に有効

生検
– EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)膵臓の組織を採取し、顕微鏡で細胞を観察

5. 膵臓がんの病期(ステージ)

磯村

膵臓がんの病期は、TNM分類に基づいて以下のように分類されます

膵臓癌のステージについて

ステージ0:がん細胞が膵管上皮内に限局している(上皮内がん)
ステージIA:腫瘍が膵臓内に限局し、2cm以下
ステージIB:腫瘍が膵臓内に限局し、2cmを超えるが4cm以下
ステージIIA:腫瘍が膵臓外に広がっているが、主要血管への浸潤なし
ステージIIB:リンパ節転移あり、ただし遠隔転移なし
ステージIII:主要血管(腹腔動脈幹、上腸間膜動脈)への浸潤あり
ステージIV:遠隔転移あり(肝臓、肺、腹膜など)

病期の正確な診断は、適切な治療方針の決定と予後の推定に重要です。

6. 膵臓がんの治療法

膵臓がんの治療は、病期や患者の全身状態に応じて以下の方法が選択されます

手術療法
– 膵頭十二指腸切除術(ホイップル手術)
– 膵体尾部切除術
– 膵全摘術

化学療法
– ゲムシタビン
– S-1
– FOLFIRINOX療法
– nab-パクリタキセル

放射線療法
– 外部照射
– 密封小線源治療

免疫療法
– 免疫チェックポイント阻害薬(臨床試験段階)

緩和ケア
– 痛みや症状の緩和
– 患者のQOL(生活の質)向上

7. 膵臓がんの予後と生存率

膵臓がんは一般的に予後不良とされていますが、早期発見と適切な治療により生存率の改善が期待できます

生存率について

– 5年相対生存率全病期で約8%(日本膵臓学会のデータによる)
– ステージI:約40%
– ステージII:約20%
– ステージIII:約10%
– ステージIV:約3%

注意これらの数値は統計的な平均であり、個々の患者の予後は様々な要因によって異なります。

8. 膵臓がんの危険性

磯村

膵臓がんは以下の理由から特に危険性が高いとされています

早期発見の難しさ
– 初期症状が乏しい
– 膵臓の解剖学的位置が深部にあり、触診や視診が困難

転移のリスク
– 早期から血行性転移やリンパ行性転移を起こしやすい
– 診断時にすでに転移している場合が多い

生活への影響
– 消化機能の低下による栄養障害
– 糖尿病の併発
– 疼痛による QOL の低下

9. 膵臓がんの予防法と生活習慣

完全な予防は困難ですが、以下の生活習慣を心がけることでリスクを低減できる可能性があります

禁煙
– 喫煙者は禁煙を
– 非喫煙者は受動喫煙を避ける

適度な飲酒
– 過度の飲酒を控える(日本酒換算で1日1合程度まで)

健康的な食生活
– 野菜や果物を積極的に摂取
– 加工肉や赤身肉の摂取を控える
– 全粒穀物を取り入れる

運動習慣
– 週150分以上の中等度の有酸素運動
– 筋力トレーニングを週2回以上

10. 膵臓がんと関連疾患

磯村

膵臓がんのリスク因子となる可能性があるものがあります。

慢性膵炎
– 長期の炎症が膵臓がんのリスクを高める
– アルコール性慢性膵炎患者は特に注意が必要

糖尿病
– 特に50歳以上で新たに発症した2型糖尿病
– 長期の糖尿病患者も膵臓がんのリスクが高い

肥満
– BMI 30以上の肥満はリスク因子
– 内臓脂肪型肥満が特に問題

既に当てはまっている方や当てはまりそうな方は予防・治療を進めていってください。

11. 膵臓がん患者の食事と栄養管理

膵臓がん患者の栄養管理は治療効果や QOL の向上に重要です

推奨される食品
– 良質なタンパク質(魚、鶏肉、豆腐など)
– 消化しやすい炭水化物(白米、うどんなど)
– 野菜や果物(繊維質は控えめに)

避けるべき食品
– 高脂肪食
– アルコール
– 刺激物(香辛料の強い食品など)

栄養補助食品の利用
– 医師や栄養士と相談の上、必要に応じて利用
– 膵消化酵素剤の使用

食事の工夫
– 少量多数回の食事
– よく噛んでゆっくり食べる
– 食後は30分程度の安静

12. 膵臓がん患者の運動と日常生活の注意点

磯村

必ず専門医の指示に従いながら、行ってください。

運動
– 主治医と相談の上、個々の状態に合わせた運動計画を立てる
– 軽度から中等度の有酸素運動(ウォーキング、水中歩行など)
– ストレッチや軽い筋力トレーニング

日常生活の注意点
– 十分な休息と睡眠をとる
– ストレス管理(瞑想、ヨガなどのリラックス法)
– 感染予防(手洗い、うがい、マスク着用)
– 体重管理と定期的な体重測定
– 症状の変化や副作用に注意し、早めに医療機関に相談

13. 膵臓がんの最新研究と治療法の展望

遺伝子解析に基づく個別化医療
– がん細胞の遺伝子変異に基づいた治療法選択
– BRCA遺伝子変異を標的とした PARP阻害剤の研究

免疫療法の進展
– CAR-T細胞療法の臨床試験
– 新しい免疫チェックポイント阻害薬の開発

新しい薬物療法
– 分子標的薬の開発(KRAS阻害剤など)
– ナノテクノロジーを利用した薬物送達システム

早期診断技術の向上
– 血液中の循環腫瘍DNAを用いた診断法
– 人工知能(AI)を活用した画像診断の精度向上

14. 膵臓がん患者と家族のサポート

心理的サポート
– 臨床心理士やカウンセラーによるカウンセリング
– サポートグループへの参加
– マインドフルネスや認知行動療法の活用

患者会や支援団体の情報
– 日本膵臓学会患者・家族支援委員会
– パンキャンジャパン(膵臓がん患者支援団体)
– がん相談支援センター(各地域のがん診療連携拠点病院に設置)

経済的支援
– 高額療養費制度の利用
– 傷病手当金や障害年金の申請
– がん患者向けの民間保険の活用

15. 膵臓がんに関するQ&A

Q1: 膵臓がんの早期発見は可能ですか?

A1: 難しいですが、定期的な健康診断と、症状がある場合の迅速な受診が重要です。

Q2: 膵臓がんの痛みはどのようなものですか?

A2: 上腹部や背中の痛みが典型的ですが、個人差があります。持続的な痛みがある場合は受診してください。

Q3: 膵臓がんの治療中も仕事を続けられますか?

A3: 個々の状況により異なりますが、多くの場合、治療と仕事の両立が可能です。主治医と相談し、職場の理解を得ることが重要です。

Q4: 膵臓がんの再発リスクはどのくらいですか?

A4: 手術後の5年以内の再発率は約80%と高いため、定期的な経過観察が重要です。

Q5: 膵臓がんと診断された後、セカンドオピニオンは必要ですか?

A5: 治療方針の決定に際し、セカンドオピニオンを求めることは患者の権利です。主治医に相談の上、検討してください。

16. まとめ早期発見と予防の重要性

膵臓がんは予後不良ながんとして知られていますが、以下の点に注意することで、早期発見や予防の可能性が高まります

1. リスク因子の認識と生活習慣の改善

   – 禁煙、適度な飲酒、健康的な食生活、定期的な運動

2. 定期的な健康診断の受診

   – 50歳以上、特にリスク因子がある場合は重要

3. 症状の早期認識と迅速な医療機関受診

   – 上腹部痛、黄疸、急激な体重減少などの症状に注意

4. 最新の医療情報への注目

   – 診断技術や治療法の進歩に関する情報収集

5. 心身の健康管理

   – ストレス管理、十分な休息、バランスの取れた生活

膵臓がんとの闘いは困難を伴いますが、医療の進歩と適切な生活管理により、予後の改善と生活の質の向上が期待できます。

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この記事を書いた人

1982年に名古屋保健衛生大学 医学部(現 藤田医科大学)卒業後、厚生連愛北病院の内科に勤務。1988年に、名古屋大学付属病院 内科で勤務し、1991年には厚生連愛北病院の消化器科医長を務める。翌年の1992年 名古屋大学 医学部医学博士号学位取得し、1993年に厚生連愛北病院内視鏡部長に。1994年に磯村医院開院し、現在は医療法人育德会 理事長 社会福祉法人延德会の理事長を務めている。2022には藍綬褒章を受章。

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