一宮市で咽頭炎の予防や治療するための医者からのアドバイス

目次

1. 咽頭炎とは

咽頭炎は、のどの奥にある咽頭(いんとう)という部分に炎症が起こる病気です。

まずは咽頭の構造と役割を理解しましょう。

咽頭は、鼻腔の後ろから食道の入り口までの部分を指します。主な機能は以下の通りです。

– 呼吸の通り道
– 飲食物を食道へ送る
– 発声に関与する

咽頭炎には、急性と慢性の2種類があります。

①急性咽頭炎
– 突然発症し、通常1~2週間で治まる
– ウイルスや細菌感染が主な原因

②慢性咽頭炎
– 3週間以上続く、または繰り返し起こる
– 喫煙、アレルギー、逆流性食道炎などが原因となることが多い

2. 咽頭炎の症状

咽頭炎の症状は、原因や種類によって異なります。

一般的な症状
– のどの痛み
– のどの違和感や乾燥感
– 嚥下時の不快感
– 咳
– 軽度の発熱

急性咽頭炎の症状
– 突然の激しいのどの痛み
– 高熱(特に細菌性の場合)
– リンパ節の腫れ
– 全身倦怠感

慢性咽頭炎の症状
– 持続的なのどの不快感
– のどの乾燥感
– 咳や痰
– 声のかすれ

重症化のサイン
– 高熱(39℃以上)が続く
– 呼吸困難
– 激しい咽頭痛で水分摂取が困難
– 意識の混濁

これらの症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。

3. 咽頭炎の原因

咽頭炎には様々な原因がありますが、主なものは以下の通りです。

ウイルス性咽頭炎
– 風邪のウイルス(ライノウイルスなど)
– インフルエンザウイルス
– アデノウイルス
– 新型コロナウイルス

細菌性咽頭炎
– 溶血性連鎖球菌(俗に言う「溶連菌」)
– マイコプラズマ
– クラミジア

アレルギー性咽頭炎
– 花粉症
– ハウスダスト
– 食物アレルギー

その他の原因
– 喫煙
– 大気汚染
– 過度の飲酒
– 乾燥した環境
– 過度の声の使用

4. 咽頭炎の診断方法

咽頭炎の正確な診断には、以下の方法が用いられます。

問診と視診は、医師が症状や経過を詳しく聞き、のどの状態を直接観察します。

咽頭培養検査は、のどの粘膜を綿棒でこすり、細菌を培養して原因を特定します。特に溶連菌感染の診断に有用です。

迅速抗原検査は、インフルエンザやその他のウイルス、細菌の迅速診断に用います。

血液検査は、炎症の程度や全身状態を確認します。

必要に応じて、アレルギー検査や画像診断(CT、MRIなど)を行うこともあります。

5. 咽頭炎の対策や治療法

磯村

咽頭炎の治療は、原因や症状の程度によって異なります。

自宅でできるケア
– 十分な休息と睡眠
– 水分の十分な摂取
– のどを温めるための湿布や温かい飲み物
– うがいの励行

薬物療法
– 抗生物質:細菌性咽頭炎の場合に使用
– 解熱鎮痛薬:発熱や痛みの緩和
– 抗ヒスタミン薬:アレルギー性咽頭炎の場合
– 咽頭薬:局所的な痛みや炎症の緩和

うがいや加湿の重要性
– うがい:のどの粘膜を清浄に保ち、細菌やウイルスを洗い流す
– 加湿:のどの乾燥を防ぎ、粘膜の防御機能を高める

重要なポイント
– ウイルス性咽頭炎には抗生物質は効果がありません
– 症状が重い場合や長引く場合は必ず医療機関を受診してください
– 処方された薬は指示通りに服用し、途中で中断しないようにしましょう

6. 咽頭炎の危険性

咽頭炎は多くの場合、適切な治療で改善しますが、注意すべき危険性もあります。

合併症のリスク
– 扁桃周囲膿瘍:扁桃の周りに膿がたまる状態で、重症化すると呼吸困難を引き起こす可能性があります。
– 中耳炎:咽頭から耳管を通じて細菌が中耳に侵入することで起こります。
– 副鼻腔炎:咽頭の炎症が副鼻腔に波及することがあります。
– リウマチ熱:溶連菌感染後に稀に発症し、心臓や関節に影響を与える可能性があります。

慢性化のリスク
– 適切な治療を受けなかった場合
– 喫煙や過度の飲酒を続ける場合
– アレルギー体質や逆流性食道炎がある場合

特に注意が必要な人
– 高齢者:免疫力が低下している場合があるため
– 免疫不全者:HIV感染者や抗がん剤治療中の方など
– 慢性疾患(糖尿病、心臓病など)を持つ方
– 乳幼児:症状を正確に伝えられないため

7. 普段からできる咽頭炎の予防法や生活習慣

日常生活での予防は咽頭炎の発症リスクを大きく下げることができます。

手洗い・うがいの習慣
– 外出後や食事前の手洗いを徹底する
– うがいは1日3回以上行い、のどの粘膜を清潔に保つ

適切な湿度管理
– 室内の湿度を50-60%に保つ
– 乾燥する季節は加湿器の使用を検討する

十分な休息とストレス管理
– 7-8時間の睡眠を心がける
– ストレス解消法(運動、趣味など)を持つ

その他の予防法
– バランスの取れた食事で免疫力を高める
– 適度な運動を行う
– 禁煙し、過度の飲酒を避ける
– マスクの着用で感染リスクを下げる

8. 咽頭炎と関連疾患

咽頭炎は他の疾患と関連したり、似た症状を示すことがあります。

扁桃炎との違い
– 扁桃炎は扁桃(へんとう)に限局した炎症
– 咽頭炎は咽頭全体の炎症
– 両者は同時に起こることもある(扁桃咽頭炎)

風邪やインフルエンザとの関連
– 風邪やインフルエンザの初期症状として咽頭炎が現れることが多い
– 咽頭炎単独の場合と比べ、全身症状(発熱、倦怠感)が強い傾向がある

逆流性食道炎との関係
– 胃酸の逆流が咽頭を刺激し、慢性的な咽頭炎の原因となることがある
– 夜間や早朝のどの痛みや、胸やけを伴うことが特徴

9. 食事や運動のポイント

適切な食事と運動は、咽頭炎の予防と回復に重要です。

咽頭炎に良い食事
– ビタミンCが豊富な果物(キウイ、イチゴなど)
– 抗炎症作用のある食品(ショウガ、ハチミツなど)
– たんぱく質が豊富な食品(魚、豆類など)
– 温かいスープや茶

避けるべき食品や飲み物
– 刺激物(香辛料の強い食品、酸っぱい食品)
– アルコール
– カフェイン
– 冷たい飲み物

咽頭炎時の適切な運動量
– 急性期は安静が基本
– 回復期には軽い散歩程度から始める
– 激しい運動や長時間の運動は避ける

10. 子どもの咽頭炎

子どもの咽頭炎は大人とは異なる特徴があり、注意が必要です。

症状の特徴
– のどの痛みを明確に訴えられないことがある
– 食欲不振や機嫌の悪さとして現れることがある
– 発熱が主な症状となることも

家庭での対処法
– 十分な水分補給を心がける
– 室内の加湿に気を付ける
– 無理に食事をさせず、食べやすいものを提供する
– 休息を十分に取らせる

医療機関を受診すべき場合
– 39℃以上の高熱が続く
– 水分摂取が困難
– ぐったりして元気がない
– 呼吸が苦しそう
– 症状が3日以上改善しない

子どもの咽頭炎は適切な管理が重要です。症状が気になる場合は、早めに小児科を受診しましょう。

11. 咽頭炎と喫煙

喫煙は咽頭炎のリスクを大きく高める要因の一つです。

喫煙が咽頭に与える影響
– 咽頭粘膜の直接的な刺激
– 粘膜の防御機能の低下
– 慢性的な炎症の誘発
– 感染に対する抵抗力の減少

禁煙のメリット
– 咽頭炎の発症リスクの低下
– 咽頭がんのリスク減少
– 味覚・嗅覚の改善
– 全身の健康状態の向上

禁煙のコツ
– 禁煙外来の利用を検討する
– ニコチン代替療法の活用
– ストレス解消法を見つける
– 周囲のサポートを得る

12. 咽頭炎とマスク着用

マスク着用は咽頭炎の予防に効果的ですが、正しい使用法が重要です。

マスク着用の効果
– 飛沫感染のリスク低減
– のどの保湿効果
– 花粉やほこりの吸入防止

正しいマスクの選び方
– 不織布マスク:ウイルスや細菌のフィルター効果が高い
– 布マスク:洗って再利用可能、保湿効果あり
– サージカルマスク:医療用で高い防御効果

正しいマスクの使用法
– 鼻とあごを確実に覆う
– 顔との隙間をなくす
– 外す際は紐を持ち、表面に触れない
– 使用後は適切に廃棄または洗濯する

注意点
– マスクを過信せず、他の予防法も併用する
– 長時間の着用は適度に休憩を入れる

13. よくある質問(FAQ)

Q: 咽頭炎の治療期間はどのくらいですか?

A: 通常、急性咽頭炎は1〜2週間程度で改善します。ただし、原因や個人の状態により異なります。

Q: 抗生物質は常に必要ですか?

A: いいえ、ウイルス性の咽頭炎では抗生物質は効果がありません。細菌性の場合のみ、医師の判断で処方されます。

Q: 学校や仕事を休むべき期間は?

A: 発熱がある場合や強い症状がある間は休むことをお勧めします。通常、症状が軽減し始めてから24〜48時間後に復帰可能です。

Q: のど飴は効果がありますか?

A: 一時的な症状緩和には効果がありますが、根本的な治療にはなりません。糖分の多いものは控えめにしましょう。

Q: 慢性咽頭炎は完治しますか?

A: 原因を特定し、適切な治療と生活習慣の改善を行うことで、多くの場合症状を管理できます。完全な治癒は個人差があります。

14. 受診の目安

以下の症状がある場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

– 39℃以上の高熱が続く
– 激しい咽頭痛で水分摂取が困難
– 呼吸困難や息苦しさがある
– 症状が1週間以上改善しない
– 繰り返し咽頭炎を発症する

どの診療科を受診すべきか
– 初期症状や軽度の場合:内科や耳鼻咽喉科
– 子どもの場合:小児科
– 重症または合併症が疑われる場合:耳鼻咽喉科
– アレルギーが原因と思われる場合:アレルギー科

受診時のポイント
– 症状の経過や程度を詳しく伝える
– 服用中の薬がある場合は伝える
– 過去の既往歴や家族歴も重要な情報

まとめ

咽頭炎は日常的によく見られる疾患ですが、適切な対応と予防が重要です。

症状が気になる場合は早めに医療機関を受診し、日頃から健康的な生活習慣を心がけることで、咽頭炎のリスクを低減できます。

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この記事を書いた人

1982年に名古屋保健衛生大学 医学部(現 藤田医科大学)卒業後、厚生連愛北病院の内科に勤務。1988年に、名古屋大学付属病院 内科で勤務し、1991年には厚生連愛北病院の消化器科医長を務める。翌年の1992年 名古屋大学 医学部医学博士号学位取得し、1993年に厚生連愛北病院内視鏡部長に。1994年に磯村医院開院し、現在は医療法人育德会 理事長 社会福祉法人延德会の理事長を務めている。2022には藍綬褒章を受章。

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