一宮市でB型・C型慢性肝炎の予防や治療するための医者からのアドバイス

目次

1. B型・C型慢性肝炎とは

B型・C型慢性肝炎は、それぞれB型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって引き起こされる肝臓の慢性炎症性疾患です。

ウイルス性肝炎の基本情報
– 急性期:感染初期の一時的な肝炎
– 慢性期:6ヶ月以上持続する肝炎

B型とC型の違い
– B型:HBVによる感染。ワクチンによる予防が可能
– C型:HCVによる感染。現在ワクチンは存在しない

両者とも適切な治療を受けないと、肝硬変や肝細胞がんに進行するリスクがあります。

2. B型・C型慢性肝炎の症状

初期症状と進行

– 倦怠感
– 食欲不振
– 吐き気
– 右上腹部の不快感や痛み
– 黄疸(進行した場合)

無症状のケースについて

多くの患者さんは自覚症状がないまま慢性化することがあります。そのため、定期的な健康診断が重要です。

肝機能異常の兆候
– AST(GOT)、ALT(GPT)などの肝酵素の上昇
– γ-GTPの上昇(特にアルコール摂取との関連)

3. B型・C型慢性肝炎の原因

ウイルスの特徴と感染経路

B型肝炎ウイルス(HBV)
– 感染力が強い
– 血液、体液、唾液などを介して感染

C型肝炎ウイルス(HCV)
– 主に血液を介して感染
– 感染力はB型より弱い

感染リスクの高い状況
– 不適切な医療行為(注射器の使い回しなど)
– 輸血(現在は極めてまれ)
– 入れ墨やピアスの施術
– 性行為(特にB型)
– 薬物乱用(注射器の共有)

母子感染について
– B型:妊婦健診で発見され、適切な処置により95%以上予防可能
– C型:母子感染のリスクは5%程度と比較的低い

4. B型・C型慢性肝炎の診断方法

血液検査の種類と意味
– HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体(B型)
– HCV抗体、HCV-RNA(C型)
– 肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP、アルブミン、ビリルビンなど)
– 血小板数(肝硬変の進行度の指標)

画像診断
– 腹部エコー:肝臓の形状、脂肪化、腫瘍の有無
– CT、MRI:より詳細な肝臓の状態評価、腫瘍の検出

肝生検の必要性
– 肝炎の活動性や線維化の程度を正確に評価
– 治療方針の決定や予後予測に重要
– 非侵襲的な超音波検査(フィブロスキャンなど)で代替可能な場合も

5. B型・C型慢性肝炎の治療法

磯村

抗ウイルス薬治療は、「ウイルスの増殖を抑制し、肝炎の進行を防ぐ」ことを目的にしています!

B型肝炎の治療方針
– 核酸アナログ製剤(エンテカビル、テノホビルなど)
– インターフェロン療法(一部の患者)
– 長期的な治療が必要な場合が多い

C型肝炎の最新治療(DAA療法)
– 直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療
– 治療期間は通常8〜12週間
– 高い治癒率(95%以上)と少ない副作用

肝庇護療法
– 肝機能を保護し、炎症を抑える薬物療法
– ウルソデオキシコール酸、強力ネオミノファーゲンCなど

実際の治療の選択や方針は、ウイルスの種類、肝炎の進行度、患者さんの年齢や全身状態などを考慮して個別に決定します。

そのため、定期的な検査と経過観察が重要です。

6. B型・C型慢性肝炎の危険性

肝硬変への進行リスク

– 慢性肝炎が持続すると、肝臓の線維化が進行
– B型:年率2-10%で肝硬変に進行
– C型:年率1-4%で肝硬変に進行
– 肝硬変になると肝機能が低下し、様々な合併症のリスクが上昇

肝細胞がんの発生リスク

– B型:年率0.8-1.2%で肝細胞がんが発生
– C型:年率1-4%で肝細胞がんが発生
– 肝硬変患者では発がんリスクがさらに上昇(年率5-8%)

肝不全について

– 肝臓の機能が著しく低下した状態
– 黄疸、腹水、脳症などの重篤な症状が出現
– 進行すると肝移植が必要となる場合もある

7. B型・C型慢性肝炎の予防法

磯村

B型・C型慢性肝炎の予防法についてかんたんに解説します。

ワクチン接種(B型肝炎)

– 1986年以降、乳児への定期接種を実施
– 医療従事者など感染リスクの高い人への接種も推奨
– 3回の接種で高い予防効果が得られる

感染予防の基本

– 血液や体液との接触を避ける
– 使い捨て注射器の使用
– コンドームの使用による性行為感染予防
– 歯ブラシ、カミソリなどの共用を避ける

健康診断の重要性

– 定期的な肝機能検査で早期発見
– 職場や市町村の健康診断を積極的に利用
– 異常が見つかった場合は速やかに専門医を受診

8. 日常生活での注意点

アルコールと肝炎
– アルコールは肝炎の進行を加速させる
– B型・C型慢性肝炎患者は禁酒が原則
– 少量でも定期的な飲酒は避けるべき

喫煙の影響
– 喫煙は肝がんのリスクを上昇させる
– 禁煙は肝炎患者の健康管理に重要

これらは肝炎の進行やガンのリスクを早めることにもつながりますので、予防するためにも

①十分な睡眠(7-8時間/日)で肝臓の回復を促進
②適度な有酸素運動(ウォーキングなど)で肝機能改善
③過度な運動は避け、疲労時は十分な休息を

これらを強くオススメします。

9. B型・C型慢性肝炎患者の食事療法

肝臓に優しい食事のポイント

– バランスの良い食事(主食、主菜、副菜をバランスよく)
– タンパク質の適切な摂取(体重1kgあたり1-1.5g/日)
– 食物繊維の積極的な摂取

避けるべき食品

– 高脂肪食
– 過度の糖質摂取
– 加工食品や保存食品(塩分や添加物に注意)

サプリメントの利用について

– ビタミンやミネラルのサプリメントは医師と相談の上で使用
– 肝臓に負担をかける可能性のあるサプリメントもあるため注意

10. B型・C型慢性肝炎と関連疾患

磯村

B型・C型慢性肝炎と関連疾患について説明していきます。

脂肪肝との関係
– 慢性肝炎患者は脂肪肝を合併しやすい
– 脂肪肝は肝炎の進行を加速させる可能性がある
– 適切な食事療法と運動療法が重要

自己免疫性肝炎との違い
– 自己免疫性肝炎:自己の免疫系が肝臓を攻撃する疾患
– ウイルス性肝炎とは原因や治療法が異なる
– 鑑別診断が重要で、専門医による精査が必要

肝炎と糖尿病
– 慢性肝炎患者は糖尿病のリスクが高い
– インスリン抵抗性の増大が原因の一つ
– 糖尿病合併は肝炎の進行や肝がんのリスクを上昇させる
– 血糖コントロールと定期的な検査が重要

11. 妊娠・出産と肝炎

磯村

母子感染と肝炎との関係性についても触れていきます。

B型肝炎
• 出産後24時間以内にHBIGとワクチンを投与
• 生後2ヶ月、3ヶ月でワクチン追加接種
• これにより95%以上の確率で感染を予防可能

C型肝炎
• 母子感染率は約5%と比較的低い
• 経膣分娩可能だが、長時間の分娩は避ける

治療と妊娠の両立
– B型肝炎:妊娠中も治療継続可能な薬剤あり(テノホビルなど)
– C型肝炎:妊娠中のDAA療法は推奨されず、出産後に治療を検討

12. 肝炎患者の就労支援

職場での配慮
– 定期的な通院や検査のための休暇取得
– 過度の肉体労働や長時間労働の回避
– ストレス管理のサポート

利用可能な社会保障制度
– 肝炎治療特別促進事業(医療費助成制度)
– 障害年金(肝機能障害で等級に該当する場合)
– 傷病手当金(会社員が療養のために休業する場合)

13. 最新の研究と治療法

新薬開発の状況として

B型肝炎
• 核酸アナログ製剤の改良型
• HBs抗原産生を抑制する新薬の開発中

C型肝炎
• さらに治療期間の短い薬剤の開発
• 耐性ウイルスに対する新薬研究

遺伝子治療の可能性
– B型肝炎:ウイルスDNAを標的とした遺伝子編集技術の研究
– 肝細胞の再生医療:幹細胞を用いた肝機能回復の研究

様々な出ているようです。

14. よくある質問(FAQ)

Q: 治療期間はどのくらいですか?

A: B型肝炎は長期的な治療が必要な場合が多く、場合によっては生涯にわたる服薬が必要です。C型肝炎は通常8〜12週間のDAA療法で治癒が期待できます。

Q: 副作用の可能性はありますか?

A: 現在の標準治療では重篤な副作用は少なくなっています。B型肝炎治療薬では腎機能低下、C型肝炎のDAA療法では倦怠感や頭痛などが報告されていますが、多くは軽度です。

Q: 完治の定義は何ですか?

A: B型肝炎ではHBs抗原の消失、C型肝炎ではSVR(治療終了後24週間のHCV-RNA陰性化)を達成することが、現在の完治の目安とされています。

15. まとめ

慢性肝炎管理 5つの重要ポイント

1. 定期的な通院と検査
2. 適切な治療の継続
3. 生活習慣の改善(禁酒、禁煙、適度な運動)
4. バランスの取れた食事
5. ストレス管理

定期検査の必要性
– 3〜6ヶ月ごとの血液検査
– 年1回以上の画像検査(エコー、CT、MRIなど)
– 肝硬変や肝がんの早期発見が重要

信頼できる情報源の紹介
– 厚生労働省 肝炎総合対策推進室
– 国立国際医療研究センター肝炎情報センター
– 日本肝臓学会

B型・C型慢性肝炎は、適切な治療と生活管理により、多くの場合コントロール可能な疾患となっています。

早期発見・早期治療が重要ですので、気になる症状がある場合や感染リスクがある場合は、躊躇せず当院を受診してください。

磯村

また、定期的な健康診断を活用し、肝機能検査を受けることをお勧めします。

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この記事を書いた人

1982年に名古屋保健衛生大学 医学部(現 藤田医科大学)卒業後、厚生連愛北病院の内科に勤務。1988年に、名古屋大学付属病院 内科で勤務し、1991年には厚生連愛北病院の消化器科医長を務める。翌年の1992年 名古屋大学 医学部医学博士号学位取得し、1993年に厚生連愛北病院内視鏡部長に。1994年に磯村医院開院し、現在は医療法人育德会 理事長 社会福祉法人延德会の理事長を務めている。2022には藍綬褒章を受章。

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